夏が終わる

　ずいぶんとスロースピードな台風ですねぇ。
　朝出かけるときは降ってなくても、帰りは豪雨かしらと思ってレインコートにタオルに
　替え靴下まで持って、仕事に行ってもお昼過ぎにはまったくそんな気配なし。
　長傘を持っているのも恥ずかしいくらいのいい天気でした。
　でも雲が、モクモクとした夏の雲と横長の細い秋の雲が入り混じっていて、
　どこかしら何かしらどこからかやってくるそんな重い湿った風が吹いていました。
　徒歩で家に着くまでの間に、ぽつぽつ降ったりやんだり、いきなり強い風が吹いたり
　一瞬ざぁーーーって雨がふったり変なお天気ではありました。
　夜になる前に、すだれを固定したり畳んだり、傘たてが強風で倒れたりしないように
　置き換えたり、家の周りの普段何気なく置きっぱなしにしているガーデン道具なんかを
　しまったり・・・
　そういえば昔、昔、子どもの頃はこうやって　”台風が来る”　ことをひとつの夏の風物詩として
　親が片付けものやその仕度をしていたことを懐かしく思い出しました。
　こうやって夏が終わっていくんだなぁ～・・・って。

　何やら遊歩道の木にはカラスが何羽もとまっていて、まるで会話をしているような
　不思議な鳴き方。
　普通の　「カアカア」　じゃなくてね。
　酷な話。
　そのカラスの会話に負けずとも劣らない、もうきっと今日か明日かの命であろうセミも
　何種類かがいっせいに精一杯木にとまって鳴いていました。
　それをなんとカラスが生きたままの状態でいきなりハンティング。
　さらには口にくわえてカラス同士で取り合いをしているのです。
　「今度はあの辺りを狙おうか・・・」　とか　「これから雨が降るから今のうちにえさを確保しよう・・・」
　とか、そんな会話でもしているのでしょうか。

　そういえば今年の夏わたしのことを癒してくれたカブ夫妻。
　彼らは実は先々週飼い主自らの手で自然に返してきました。
　弱りきっていたカブ君とその１０倍は元気なカブちゃんを、セミがたくさん鳴いている
　木々の根元の枯れ葉のお布団がふっかふかの、きっとそのお布団の下のほうにもぐりこんで
　まさかカラスの餌食にはならずにきっとそこで大地の一部になってくれることであろうと・・・

　今年の夏は暑かったです。
　去年も一昨年も暑かったけど、今年は特別な意味で日本が世界が地球が暑いよ暑いよ・・・
　と言っているようでした。
　去年、一昨年だったらこのまま涼しくなったねーなんていって寒い季節を迎えるのでしょうが
　今年は寒くなる前に、まだまだやらなくてはいけないこと考えなくてはいけないことが
　たくさんあるのでしょうね。
　政治のトップが替わって、少しはいい流れに向かっていくのでしょうか。
　山積みになった問題をひとつずつ片付けて、みんなの笑顔が戻る日が早く来るといいですね。

　夏の終わりに残ったもの。
　木々に茂った葉の裏側に点々とくっついたままになっている無数のセミの抜け殻。
　羽と頭だけになってひっくり返った、ついさっきまで鳴いていたんじゃないかしらと思うほど
　今にも動き出しそうだけどもう動かないカラスの餌食になったセミ。
　この台風で夏という季節と共に吹っ飛ばされてしまうのでしょうか。
　そしてやっぱり人間のエゴで狭いケースに入れられて、都合でほったらかしだったり
　執拗に捕まれたり触られたり・・・
　結局最後の最後の始末を怠って、自然に任せてしまったことに対しての飼い主としての
　わたしの心の中の柔らかい部分をぎゅっとされたような罪悪感・・・

　





　２日夕方６時頃の窓の外・・・